有価証券報告書などの解析に自然言語処理AI技術を活用

金融・資本市場をとりまく環境の変化に応じて、利用者保護ルールを徹底し、利便性を向上させる。「貯蓄から投資」に向けての市場機能の確保及び同市場の国際化への対応を図るとして、平成19年に関連法が改正・整備された。

金融商品取引法に基づき企業に義務付けられるさまざまな開示書類、有価証券報告書などから必要情報を抽出し、最新情報に更新する業務に工数を費やしている。情報配信サービスを手掛けるQUICKは、毎月1,000件超の開示書類を専任者が目視確認し、データベースを更新する。人手による作業を中心としているため、さらなる業務の効率化と高付加価値なサービスの提供に向けて、業務のシステム化を検討してきたという。

今月3日、日立製作所は同社のAI(人工知能)が、QUICKの企業開示書類の解析業務に採用されたことを発表した。日立独自の自然言語処理技術を適用することで、1件100頁に及ぶこともある膨大な開示書類を解読し、必要情報の自動抽出が可能となる。QUICKでは解析業務の大幅な効率化が図れ、さらに鮮度の高い情報を適宜マーケットに届けられるようになる。

大量のテキストデータから文章を論理的に読み解き、企業の経営判断を支援する「ディベート型AI」の中核技術を適用して、文章の構文パターンや表の構造から単語や事象の相関を特定・抽出する。開示書類の中から「決算日」や「基準価格」など約130項目の該当情報を抜き出し、データベースに登録するまでの一連の作業を自動化する。

システム化を進め、5月から投資信託の有価証券届出書と株式の有価証券報告書を対象に本格的に適用を開始。その後、債券発行登録追補書類など適用対象を順次拡大していくという。日立は今回の取り組みをLumadaのユースケースとし、得られた成果をもとに、他の金融機関や幅広い業種にも適用できる新たなAIソリューションの開発に取り組んでいく考えだ。