市役所の支出業務、AI用いておよそ1,600時間削減へ

行政改革と団塊世代の退職により、地方自治体の職員が減少している。その一方で、内部統制の強化、少子高齢化、災害対策などに対応せねばならず業務の幅が拡大している、市役所では、さらなる業務の効率化が大命題となっている。

静岡県浜松市では、年間約30万件の支出命令伝票を確認――事務執行に必要な現金の支払前に金額や内容をチェックする支出業務の審査において、年間1万件を超える命令の差し戻しが発生していて、その作業負荷が課題であったという。同市は富士通と、決裁・審査にAIを活用する実証実験を昨年6月~12月に実施し、支出に関わる市役所業務全体で年間最大約1,597時間の削減が見込めることを確認した。

AIが90%以上の精度で起票伝票と請求書の確認対象項目を自動検知。再起票や再決裁の業務が不要となり、会計課の出納審査業務でも年間約4,600件の不備伝票への対応が不要となる。決裁・審査業務の一部をAIが支援することで、経験が浅い職員でも適正な起案・決裁を行うことが可能となり、不要な差し戻し作業を軽減することができる。

過去の支出命令伝票をAIに学習させることで、AIが請求書の検出や内容分析を行い確認項目及び不備を自動検出する。今回開発した仕組みは、ディープラーニングを用いて印鑑の印影を自動検出する富士通総研の物体検出技術と、帳票内の情報を自動検出するPFUのAI- OCR技術を組み合わせたものであり、それらの検出結果を活用し起案直後にシステム上で起案者や決裁者に通知する。

起案部門決裁と会計課審査間での差し戻しの発生を防げるため、決裁および審査業務を効率化できる。技術の上記実証結果を踏まえ、浜松市は、テスト環境での運用により費用対効果を確認した上でその導入を検討する。一方、富士通は、同技術を自治体向け内部情報ソリューション「IPKNOWLEDGE」に組み込み、職員の働き方改革等を支援していく計画だ。