チョウザメの卵を塩漬けにした「キャビア」は世界的に有名であり、美食家が垂涎する代物である。けれども、チョウザメを養殖しようとすれば、卵を産むまでに6年以上の飼育が必要であり、雌雄の区別が可能になるまで2~3年の期間を要し、非常に高いコストがかかる。
それだけではなく、養殖環境の変化で全滅する恐れがあるため、飼育員による長期間の監視が求められる。チョウザメの養殖方法は確立されておらず、監視体制の構築などが課題になっていたという。北海道大学大学院水産科学研究院とソフトバンクは今月1日、IoTやAI(人工知能)を用いたチョウザメのスマート養殖共同研究プロジェクトを開始。'23年1月31日までの3年間、このプロジェクトを実施するという。
機械学習を用いてチョウザメの個体識別や行動分析を行うことで、異常行動の早期発見、病気のまん延防止、水流停止や餌の供給過多のような養殖環境の異常を検知し、チョウザメの全滅を防ぐ方法を研究する。水中や水上の画像データや環境情報データ等を、IoT機器でリアルタイムに収集・分析――。模擬水流とCGの筋骨格モデルにて、様々な仮想環境による個体の泳法の3Dシミュレーションデータも使用する。
チョウザメの3DCGモデルは、魚生物学シミュレーションを可能にするリアルな筋骨格3DCGを再現する予定である。世界的にも類を見ない、精巧な魚の3DCGを普及させることで、養殖を含む水産業や、教育・研究開発など広い分野への貢献を目標とする。そのうえ実際の画像データから個体ないし全体としての異常行動を自動検知する、今回の共同研究によって、低価格の養殖チョウザメを実現する方法の確立をめざすという。
両者は、低コストかつ効率的な養殖方法を打ち立てることはいうまでもなく、さらにIoTやAIを用いた養殖方法の確立に向かって、水産分野における各種テクノロジーの可能性、実現性を検証していく考えだ。