ミクロ領域の熱物性を把握する、省エネ実現ソフトウェアが公開

徹底した省エネのためには、その供給過程で捨てられている未利用熱を削減(Reduce)、再利用(Reuse)、他形態に変換(Recycle)する「熱の3R」に向けた熱機能材料やデバイスを開発し、それらを社会実装することが必要である。

ここ10年程の第一原理計算の発展により、単結晶の熱伝導率の計算やフォノン(固体内の格子熱)の微視的な輸送解析が可能になってきた。が、実際に開発される材料の多くは多結晶粒界や細孔などを有するため、ミクロレベルの複雑な形状や内部構造を考慮しつつ熱伝導率を簡単に計算する方法が求められ、また、熱機能材料のイノベーションにおいては、ナノ構造を考慮した熱伝導率の計算が必須になるという。

エネルギーの供給過程で排出される未利用熱の革新的活用技術に関する研究開発に取り組んでいる、NEDOは、TherMAT東京大学とともに、多結晶体などの複雑なナノ構造を持つさまざまな熱機能材料の熱伝導率を手軽で高精度に予測・熱伝導現象を再現するソフトウエア「P-TRANS」を開発したと27日に発表。同日、60種類以上の材料に対応する同ソフトウェアは東大のフォノン・ウェブサイトで公開された。

無償でダウンロードできる「P-TRANS」は、モンテカルロ・レイトレーシング法とGUIを融合した、学術界や産業界などの研究現場での普及を目標に使いやすさを重視したものであり、数秒~数分で熱伝導率を計算でき、フォノン周波数に依存した熱伝導率スペクトルも計算可能である。ソフトウエアの活用により、ミクロな領域の熱物性を把握できるため、高性能な熱機能材料の研究開発が促進されることが期待される。

その機能拡張と活用を進め、効率的な材料・デバイスの開発と抜本的な性能向上を図り、熱の3Rによる徹底した省エネルギーの実現を目指すという。NEDOは「P-TRANS」を、第44回地球環境とエネルギーの調和展で披露する。