デジタル画像技術により抗がん剤のメカニズムを解析、薬効の評価へ

がん医学において遺伝的研究が進んでいる。近年、何百もの遺伝子ががんの発病・進行に関係していることや、遺伝子発現パターンが個人ごとに異なることがわかっている。数ある抗がん剤の中から各人に最適な治療薬を選択して投与する、プレシジョン・メディスンの検討が進められている。

抗がん剤の開発、薬効試験に広く用いられてきた株化細胞は、長期間継代培養することでがん細胞が本来有する遺伝的特性が変化し、評価の正しさに影響を与えることが課題である。そのため、医療-産業TRCでは、患者のがん組織をオルガノイド培養(試験管内で立体的に自己形成)し、遺伝子変異情報と併せて提供――患者由来がんオルガノイドは、生体内のがんに近いモデルとして、創薬メーカーから注目を集めているという。

福島県立医科大学オリンパスは、3次元解析を用いた抗がん剤の薬効評価手法の確立をめざして、今年1月に共同研究の第2フェーズを開始した。同社の持つイメージング技術、3次元細胞解析技術を駆使し、同大学が所有する多様な遺伝子変異を持った肺がん患者由来のオルガノイドに対して、画像を用いた抗がん剤のメカニズム解析や薬効評価を行っていく。

これまでの共同研究(関連論文)で確立した3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」による定量化手法を用いて、抗がん剤が様々な遺伝子変異を持つ肺がん患者由来のオルガノイドに及ぼす影響を評価する。これにより、がん遺伝子と投与した抗がん剤の関係性を明らかにし、抗がん剤の有効性を評価する手法の確立につなげる――。将来的には患者ごとの治療方針の決定や、創薬スクリーニングへの応用が期待されるという。

共同研究を通じて両者は、個人の遺伝子変異に応じた最適な治療の選定へ貢献するとともに、3次元細胞モデルのイメージング・解析技術を確立することで創薬プロセスを改善し、製薬企業の抱える創薬の開発リスク低減に寄与していくという。