水難事故の救助を素早くする、デジタル技術連係効果を確認

古くは「近江の海」と歌に詠まれた琵琶湖はいま、マリンレジャーのメッカ。釣りや帆走などを楽しむ人々が毎年多く訪れていて、マリンレジャーへの不慣れや天候の急変に起因する水難事故の予防、および救助の迅速化などのためのしくみづくりが急がれている。

琵琶湖は日本最大の湖で、救助が遅れると深刻な被害に発展することがある。携帯電話で救助を要請しても現在地を正確に伝えられないとか、要請後に流されてしまうとか、そもそも連絡手段を持ち合わせてないとか――。プレジャーボート等の係留・保管施設"マリーナ"が、ボートの帰港時間が過ぎてから異変に気づき、救助を要請することもある。約670平方kmの湖上で位置を特定できない、捜索は困難だという。

ハムステッドホシデンKCCSは、総務省近畿総合通信局が主催する「滋賀県琵琶湖地域における電波有効利用検討会」において、IoTネットワーク「Sigfox」を活用したレジャー用船舶及び乗船者を見守るための通信システムを構築・提供。実証実験にてその有効性を確認した。滋賀県大津市でマリーナ事業などを営むリブレが同実験に協力した。

「複数の見守り対象(船舶)の位置情報を同時に表示」、「低消費電力で定期的に位置情報を発信」、「IoT向けの低価格ネットワークの利用により運用費が低減」するしくみにより、琵琶湖のほぼ全域において位置情報と救難信号を確認でき、マリーナの管理者はその情報を得られた。即ち、事故により帰港できなくなったプレジャーボートの発見・救助、落水した事故者の捜索で、同システムは有効に機能することが認められた。

水難事故救助の迅速化に期待が寄せられる。システムは年額8千円(小型船にも有用な充電式端末込み)の見守りサービス「Kinsei GPS」として3月に販売開始予定であり、リブレではその本格導入を決定。同社が運営するマリーナにて、主にレンタル用ヨットでの活用が見込まれている。