先進国の証でもある下水道とその処理施設。わが国では、毎年東京ドーム約12,000杯分(約146億立方メートル)の下水を処理していて、その過程で多くのエネルギーを使用している。全国の電力消費量の約0.7%(約70億kWh)は、下水処理に由来している。
多くの電力を消費し、日本の温室効果ガスの約0.5%(約621万t-CO2)を排出している下水道の現状が国交省の講義資料(PDF@長野県庁Web)でわかる。今月22日、三菱電機は、同社のAI技術「Maisart®」を活用し、下水処理に必要な酸化処理を行う生物反応槽への流入水の質を数時間先まで高精度に予測することにより、同槽への過剰な曝気(空気供給)を抑制する曝気量制御技術を開発したと発表。
1次処理後の下水が最終沈殿池へ流れていく間にある生物反応槽において、その流入水質(アンモニア濃度)をセンサーで取得し、「Maisart」を用いて高精度に先見する。流入水質の予測値を用いたフィードフォワード(FF)制御を従来の処理水質のフィードバック(FB)制御に組み合わせて、水質変動に対する曝気量制御の応答性を向上し、過剰な曝気、すなわち浄化を行う微生物に供給する酸素の過ぎたる量を抑制する。
生物反応槽の区画ごとに適切な曝気量となるよう個別に制御することで、処理水質を維持しながら、曝気量を従来比約10%削減(実際の下水処理場のデータを用いたシミュレーション結果)する。全国総計で年間約1,100億円分もの電力を購入している、日本国内の下水処理場の協力を得てその効果を確認中である――。新技術は、上記約70億kWhの電力を消費する下水処理場の電力消費量の削減に貢献するという。
三菱電機は今回開発した技術について、引き続き、実運転での制御の安定性や曝気量削減効果を検証し、国内外の下水処理場向け運転監視制御システムとする、そして'20年度の事業化を目指している。