スマートビレッジの創生、林業の安全確保と獣害対策から

日本の林業は、戦後の積極的な造林により人工林の半数以上が伐採適齢期を迎え、国産材利用の増加等を背景に木材自給率は上昇傾向にある。その一方で、林業従事者数は30年間で約1/3まで減少しているうえに、多発する労働災害への対応が急務となっている。

林野庁「平成30年木材需給表」によれば自給率は平成23年から8年連続上昇、「林業労働力の動向」には平成27年に従事者が4.5人となったこと、そして「林業労働災害の現況」には伐木作業中の倒木事故などによる死傷率が、全産業平均の約10倍であることが示されている。林業ではさらに、持続可能な森づくりや災害対策の観点から、伐採後の植林や育林の必要性が高まっているのに、シカ等による新苗等への食害が深刻である。

それらの課題に対して、IoT(モノのインターネット)技術で抑止したり、効率化したり――。期待されていても、定住地域から離れた山間部では、IoTを活用するための通信環境そのものが整っていないことが多くあるという。山梨県小菅村北都留森林組合boonboon(@FB)さとゆめNTT東日本は2月、豊富な森林資源を有する同村山間部にIoTを実装し、課題解決及びSmart Village実現に向けた実証実験を開始する。

こぞって地方創生に取り組む村、林業の成長産業化に積極的な森林組合、鳥獣害対策ベンチャー企業、古民家ホテルの開業等に携わってきた会社、各地でICT活用事例を作り続けている情報通信技術ベンダーの5者が協力し、山間部を効率的に網羅する高出力の独自LPWA(省電力広域無線)を用い、従事者が緊急時の救助要請が可能にする仕組みや害獣捕獲時の通知機能を提供する。

SOS発信、位置情報把握、チャットコミュニケーションといったICTを導入するほか、害獣捕獲や罠の巡視をスマートかつ効率化することで、より安全で生産性の高い林業経営の実現をめざしていくという。