1枚のイメージセンサーで患者の取り違えや"なりすまし"を予防

超高齢社会となった日本では、医療費の抑制と生活の質(QoL)向上の両立が課題となっている。今、この難問に対する、新しいデバイス等の技術とその活用への期待が高まっている。

患者自身や家族らによるセルフケアや在宅医療が上記課題解決の糸口になると考えられていて、本格的なセルフケア時代に向けて、健康状態を常時モニタリングできるウェアラブルセンサーや通信機能付きの家庭用血圧計などが続々市場投入されている。他方、生体情報を活用した新しい保険制度やインセンティブ制度の設計では、在宅測定したデータが患者本人のものかを如何にして確認するかが問われている。

さらに将来、ウェアラブル機器の利用が増えて、病院や福祉施設で患者の取り違えが起こるかも知れない。リスクを低減するため、ユーザーの生体認証と同時にバイタルサインを計測するしくみ作りが重要かつ急務になっているという。東京大学ジャパンディスプレイ(JDI)科学技術振興機構(JST)は21日、同大学大学院工学系研究科教授らとJDIがシート型イメージセンサーの開発に成功したことを共同発表した。

同センサーは厚さ15μm、軽量で、曲げられる。高感度な有機光検出器(光の強度によって、流れる電気の量が変化)と、高移動度の低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(多結晶シリコン製電子スイッチ)とを集積化することで、高解像度と高速読み出しを両立――生体認証向けの指紋や静脈の撮像と、脈波の分布計測を1個で行え、ウェアラブル機器への組み込みも容易だという。

ユーザーの生体認証と同時に健康状態の測定が可能となるため、セルフケアにおける「なりすまし」や病院等での「取り違え」を予防できるだろう。センサー開発の成果は、JST未来社会創造事業ACCELにおける「スーパーバイオイメージャーの開発」によるものであり、英国科学誌「Nature Electronics」電子版に掲載されている。