紙をつかわない財産調査、照会実務のデジタル化を検証する

昨年度、自営業者らによる国民年金(会社員は厚生年金と共に自動払い)の納付率は68.1%だった。特別の事情があり納付を免除あるいは猶予されている人を除けば、およそ6千7百万人の公的年金被保険者は、それを滞納すると財産の調査・差し押さえを受けることとなる――。

日本年金機構が金融機関との間で行う財産(預貯金状況)調査――同機構から金融機関へ調査を依頼し、金融機関における照会処理の結果が同機構へ回答される一連の業務プロセスにおいて、これまでは異なる様式かつ紙による調査が実施されていて、事務所職員の業務負荷や、調査回答期間の長期化が大きな課題になっていた。

そこで、そのような課題を解決するために'19年2月から預貯金等照会業務の電子化サービス「pipitLINQ®(ピピットリンク)」を提供してきたという。NTTデータ日本年金機構と来月より、同機構において、埼玉りそな銀行横浜銀行川崎信用金庫の協力のもと「pipitLINQ」を活用した実務検証を実施する。同社は実務検証用システムも提供する。

今回、財産調査に係るやり取りに電子データを用いることで、どの程度の作業時間削減と業務効率化が可能かを検証する。ほかに、口座の特定結果や、電子データ化に伴う照会結果の検証等を行う。年金機構は電子データによる財産調査の一通りのプロセスを実施し、想定した運用手順の妥当性の確認、電子化後の運用上の課題抽出等をおこなう。電子データによる財産調査依頼への回答は金融機関がシステム上で実施する。

日本年金機構の「紙をなくす(紙ゼロ)」「紙を移動させない」デジタルワークフローへの転換に貢献していくという。NTTデータは'21年度末までに300の自治体、120の金融機関へのピピットリンク導入を目指していて、このしくみの中央省庁への拡大を通じて「デジタル・ガバメント実行計画」個別サービス改革の実現を推進していく考えだ。