モバイル型燃料電池システムで東京湾を航行する

地球の温暖化を防ぐために、さまざまな国が低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの利用等を推進している。なかでも、化学反応を用いて発電する際に水しか排出しない「燃料電池」は、エネルギー効率にも優れていて未来を照らす究極のエコシステムと言えるだろう。

日本では昨春、産官学が目標を共有する「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(経産省PDF)が新たに策定された。背景には'14年来の改訂作業、'17年12月水素基本戦略、'18年7月第5次エネルギー基本計画および同年10月のTokyo Statement(東京宣言)の発表がある。そして'19年12月末、東芝エネルギーシステムズは、NREG東芝不動産東京海洋大学が進める実験船に移動型水素燃料電池システムを納入した。

東京都江東区の同大学から半径10海里内で「オリンピックレガシー」の一助となる、水素社会実現に向けた実証試験が行われている。燃料電池船「らいちょうN」に納められた移動型30kW純水素燃料電池システムは、船舶のほか、鉄道やトラックなどへの搭載を想定して新規開発したものであり、水素を燃料とし二酸化炭素を発生させずに発電することができる。これまでのエンジンよりも低騒音かつ最短1分で発電を開始できるという。

東芝エネルギーシステムズは、仕組みの簡素化やパッケージングの工夫等により、定置用燃料電池に比べ約1/3となる小型化を実現した。新開発システムには水素燃料電池船の安全ガイドライン案に準拠した安全設計を施している。今回、'16年の仕組みより大型の30kW純水素燃料電池モジュールを搭載した船の実証実験により、NREG東芝不動産と東京海洋大学は、純水素燃料電池システムの海上使用における課題抽出を行う。

「水素」導入拡大に貢献する。この度の実証実験で得られた結果は、国交省が策定を進めている燃料電池船の安全ガイドラインにて確認される予定だ。