119通報、緊急度と病名をAIが判定する

超高齢化社会を迎えた日本では、救急出動件数が増加している。救急出動の重複などにより、119番通報から現場及び病院到着までの時間が延伸――心肺停止事案における救命率の低下が懸念されている。

ゆえに消防庁は「救急車の適正利用」を推進。住民、救急相談員、通信指令員、救急隊員における「緊急度判定プロトコル」を定めている。通信指令員が傷病者の緊急度を判定し、ドクターカーや救急車+消防車などの要否を決めるほか、急な傷病には「救急安心センター(#7119)」にて医師や看護師など専門家からアドバイスを受け、適切な受診方法を判断することなどを有効とし、全国での利用を推奨している。

救急現場に投入可能なリソースの適切な配分と活用に向け、同プロトコルをさらに普及させるには、現在のそれを継続改良することが必要である。とりわけ緊急性の低い事案の判別や病名を予測する点で、充実化が求められているという。

京都橘大学日立製作所は今月24日、通信指令員向けに、AI(人工知能)を活用して傷病者の緊急度の判定を支援するシステムの共同研究を開始する。豊中市消防局の協力のもと119番通報時の聴取内容を用いて、法令及び国が定めた指針等を遵守しながら、AI予測モデルを構築し、年齢や性別、症状、既往歴等からリアルタイムで緊急度と病名を予測するシステムの検討・開発に取り組む。

個人情報を除いた聴取内容、搬送後に救急隊が記録した緊急度、搬送先での初期診断結果などの蓄積データを用いて、緊急度判定プロトコルの判定精度を分析するほか、AIの判定精度を検証する。システムで予測した緊急度や病名と、救急隊が判断した緊急度、病院での初診時の診断などを総合的に突き合わせ、AIに学習させることで継続したシステムの精度向上を図っていく。

両者は、AIによる判定内容と初期診断結果の照合などにより、同システムの精度や有用性の検証を行っていくという。