一般的に、乳がんの診断にはマンモグラフィーが用いられる。乳房組織が密な女性の場合、それだけでは精度が不十分なため、乳房エコー検査による診断も行われる。エコー画像から患部画像を読み取る方法は、技師や医師の主観や経験に依存しがちである。
偽陽性率(良性腫瘤を悪性と診断する割合)の高さから、乳房に針を刺して組織や細胞を採取する生体検査が追加されることが多く、患者の精神的・肉体的負担が増加する点も課題だという。東北大学大学院医学系研究科とSAS Institute Japanは今月20日、医学統計学分野の山口拓洋教授らの研究グループが「SAS® Viya®」を利用し、乳房エコー画像内の腫瘤を識別する診断支援システムを開発したと発表した。
画像の特徴を自動学習するディープ・ラーニングのCNN (畳み込みニューラルネットワーク)を用いて、2つのモデルを組み合わせることでより精度の高い識別を実現する「アンサンブル学習」を開発。画像ごとに腫瘤の識別をするのではなく、患者ごとに複数の撮像をまとめて判別する方法も採用した。結果、感度(悪性腫瘤を正しく悪性と識別する割合)90.9%、特異度(良性腫瘤を正しく良性と識別する割合)87.0%を達成した。
機械学習の評価指標AUC0.951も獲得した。各画像のなかで、CNNモデルがどの部分に注目して識別結果を出力したか分析したところ、腫瘤そのもの以外の部分にも識別のためのヒントが隠されている可能性が示され、画像診断における新たな視点の必要性が示唆された。SASの支援によりエコー画像診断に深層学習を応用でき、精度の高い診断支援システムが開発できたという。
医師や患者の負担軽減に加え、医療費削減につながることも期待される。この度の診断支援システムを実現した、研究グループの成果は国際科学誌「Physics in Medicine & Biology」にて発表された。