走行車両と橋のたわみ・揺れを同時撮影、橋梁劣化をAIで推定する

高度成長期に集中整備された社会資本の老朽化が大きな問題となっている。日本国内には長さ10~30mの橋梁が多く、その点検は目視や打音によるものが一般的であり、技術者の経験等に左右される。一方で、高度成長を支えた団塊世代の引退などによる技術継承の途絶も心配される。

経験豊富な技術者にくわえ足場の設置を必要とする、従来の点検方法は高コストであるとして、近年、無人航空機ドローンなどを活用し表面のひびわれや腐食などを画像解析から検出する橋梁点検が進められている。が、表面にひびなどが現れる時点ですでに重大な損傷になっていることが多く、老朽化が進んでいるインフラを効率よく点検する技術や早期補修のために劣化推定ができる技術の開発が求められているという。

京都大学金哲佑 工学研究科教授は、NTTドコモと共同で、橋梁を走行する車両と、車両通過時に発生する橋のたわみや揺れを同時に動画で撮影し、人工知能(AI)で橋の劣化を推定できる「橋梁劣化推定AI」を世界で初めて開発した。同技術は今月9日~来年9月30日、富山市の八尾大橋にて実証実験される。

橋のたわみは橋梁上の物体にも影響されるため、走行車両の重量を推定したうえで、橋梁の複数点のたわみ(変位)を解析して劣化度合いを正しくAIで推定する。車両通行量や設置環境など、それぞれで状況が異なるため、定期点検やモニタリングによって橋梁ごとのデータを蓄積する――。しくみによって、AIの推定精度がより向上していくことが期待されるという。

両者は今後、橋梁点検や劣化診断作業への有効性や検出精度の検証を進め、2022年ごろまでに同技術の実用化する。そして将来的には同技術を活用した橋梁の維持管理の実現をめざす。また、来る第5世代移動通信(5G)時代には、4Kや8Kなどの高精細で大容量の動画を低遅延で送信することで、より精度の高い橋梁点検を実現することが可能になるという。