日本政府がうたう超スマート社会の実現策"Society5.0"においても、無人航空機ドローンの活用がさまざまな産業分野・行政領域で想定されている。ドローンの自律・自動飛行は、地図データとの連係を必須として、一般的にはGPS(全地球測位システム)信号を用いるなどして実現される。
建築研究所が過去にまとめた「ドローン技術の動向と建築維持保全への利活用検討」(PDF資料)ではおよそ屋外作業を前提とし目視外飛行を想定していなかった。「無人航空機の飛行ルール」(国交省Web)が改正されてもまだ、自動操縦にはしがらみが多い。
今月18日、ゼンリンデータコムは、JR北海道と共同で、8月6日~9日に非GPS環境の阿分トンネル(廃線トンネル)内でドローンを自動飛行させる実証実験を行ったと発表(実験動画:YouTube)。JR北海道では、これまで人の目や手で実施していた検査の一部について、ドローンを活用することを検討し、試験を行っているという。
徒歩と目視により行ってきたトンネル内の検査や点検の一部に、ドローンを飛行させ撮影した画像を活用することで、将来的な労働力不足などを見据えた設備の維持管理の効率化、線路内立ち入り機会の減少による作業時の安全性を向上――。これらを目的としている。非GPS環境下での安定飛行には、周囲の状況や対象の形状を把握し、その形状を基に自己位置を認識することが必要となる。
例えば、レーザーセンサーやカメラ認識技術を用いて、トンネルの断面形状をリアルタイムに把握し、その瞬間にどの位置にいるかを認知する技術などの開発が求められるという。ゼンリンデータコムは今回の実証実験においてドローンの飛行に関する技術サポートを担当。今後もJR北海道とともに研究開発を進めていく予定であり、将来的にはドローンの撮影画像を活用し、AI(人工知能)によるデータ解析等を行うことも検討しているという。