スパコン利用を効率化、新開発技術とクラウドバースティングにて

科学技術計算用の大規模・高速コンピュータ――構造解析や気象あるいは渋滞予測、航空機などの物理的ないし天体や金融商品のシミュレーション、創薬、化合物開発のための計算化学等々に用いるスパコンの需要が高まっている。

総理論演算性能1.463PFLOPSを有するスカラ型スパコン「OCTOPUS」は、研究者の需要増大により、計算要求から計算完了までの待ち時間が定常的に長くなっている。問題が深刻になりつつあり、IaaS型クラウドサービスを利用した解決法が望まれていたが従来、同スパコンと民間のクラウドサービスの同時利用は、運用上困難であった。利用者の管理、計算の管理等に相違があったために。

大阪大学サイバーメディアセンター(CMC)の研究グループは、NECおよび日本マイクロソフトと、大規模計算機システム環境において、計算需要が急増した場合にパブリッククラウドへ負荷をオフロードするクラウドバースティングを実装した。今回、スケジューラ(ジョブ管理機能)、クラウドサービス制御機能を同大学とNECが新たに開発し、大幅なシステム変更等なしに、OCTOPUSとAzureのクラウドバースティング環境が実現できたという。

'19年内にOCTOPUSの利用者である研究者を対象に実証実験を行う。OCTOPUS-Azureクラウドバースティング環境での検証を通じて、将来の本格運用に向けた技術課題の抽出を行いつつ、医療データなどの取り扱いを想定したオンプレミス・パブリッククラウド環境間でのセキュアなデータ共有についても検証する。OCTOPUSのクラウドバースティング拡張が可能になると、利用者の待ち時間の縮減、ジョブスループットの向上が見込める。

この度の実装技術は米国コロラド州デンバーで開催中の「SC19」(CMCブース)にて披露され、研究成果は12月13日、「大学ICT推進協議会2019年度年次大会」にて発表される。