情報通信
ナスカ地上絵、AI用いて143点目も新たに
1994年にユネスコの世界文化遺産に登録された。南米ペルーのナスカ地域に一筆書きで描かれたサルやハチドリ、イヌ、灰色の山の斜面で片手をあげている巨人像などはあまりにも有名である。一帯の雄大な地上絵を見るためには、大空に駆け上がらなければならない。
「ナスカの地上絵」について、'04年来研究し、'12年にはナスカ研究所を開設した山形大学は、数多の絵を発見しながら保護活動を推進してきた。地上絵の分布調査は未だ充分ではなく、市街地の拡大にともない進む破壊が、社会問題になっているという。坂井正人教授らの研究グループは、昨年までの現地調査と高解像度3Dデータ解析などにより、ナスカ台地とその周辺部で新たに人や動物などの具象的な地上絵142点を発見した。
主にナスカ台地の西部に分布する。それらは紀元前100年~紀元300年頃に描かれたと考えられる――。そして、'18年〜'19年におこなった日本IBMとの共同実証実験において、高解像度の空撮写真データを高速処理できるIBM Power System AC922上に構築されたディープ・ラーニング・プラットフォームIBM Watson Machine Learning Community EditionでAIモデルを開発。これにより、新たな地上絵1点を発見した。
今回、日本IBMとの上記実証実験を踏まえて、リモートセンシングとAIを研究してきたIBMワトソン研究所と共同研究を実施するために学術協定を締結した。同大学は今後、同社の3次元時空間データを高速かつ効率的に解析するAIプラットフォーム「IBM PAIRS Geoscope」を活用することで、地上絵の分布状況の把握を進め、現地調査に基づいた分布図を作成する予定だという。
考古学的にまだ謎が多い。ナスカの地上絵の全体像を把握し、研究を加速させる。両者の取り組みは、世界遺産保護への貢献が期待される。