地中にある通信用光ファイバーで道路上の交通状況を検知

日本が「データ駆動型社会」の実現をめざしている。昨今、世界に目を向ければ「スマートシティ」の具現化が進んでいる。その礎となるのは既存の、そしてこれからも縦横に敷設されていくデータ通信用の光ファイバーである。道路の下にあるそれは交通モニタリングへの応用が期待されている。

道路の混雑状況、車両の走行方向やスピード、加速・減速などを測定し情報収集する。仕組みでは従来、センシング目的のファイバを所定の間隔で、新たに地表近くに埋設する必要があったという。NECベライゾンは、地中に既設されてある通信用光ファイバをセンサとして活用する共同実証実験を米国で行い、道路の路面状態、混雑状況、車両の種類などの情報を検知することに成功した。

AI(人工知能)活用ソフトを搭載したNEC製の光ファイバセンサが使用された(実験結果例)。 今回両社が開発した技術では、既存の通信用光ファイバにより、新設のそれと同様なデータを得られる。橋やトンネルなどのインフラ劣化の効率的な検知による地方自治体の対応力向上や、銃の発砲に対する初動対応の支援など、公的機能を支援するソリューションを強化できるという。

交通状況を自動的に全線モニタリングするために各種AIツールを使用した。NECの独自技術によるセンシングシステムは、光ファイバケーブルに接続した統合探査装置を用いて後方散乱光の特性を評価し、光区間のファイバにおける静的歪み、振動などの動的歪み、音響および温度を算出可能――。従来のセンサで得られなかった、幅広い実用的なデータに変換できるという。

米国で数10万マイルの通信用ファイバを敷設済みで、さらに毎月1,400マイルのファイバを敷設予定である。ベライゾンは、自治体のデータ収集を支援できる地域を拡大。価値ある新しいデータを創出し、多様な環境を自動分析可能とする。実験結果は両社共同で、OFC2019にレポートされた。