従来、マグニチュード8超の巨大地震が発生した際、その後に起こる余効変動から、地下の粘性構造や断層上の摩擦特性、岩石のレオロジー(変形する様子)特性の推定が試みられてきた。特に2011年の、東北地方太平洋沖を震源とする巨大地震後には――
海域観測網の発達と数値モデリングの進展があり、余効変動に関して、複雑な岩石レオロジーを考慮したモデリングも盛んになっている。が、我々の社会生活に関わる鉛直変動(地盤の隆起・沈降)の観測結果については説明されていない。東北地方全域における余効変動はあれから5年経ても勢いがあった。地震時に最大1m沈降した沿岸部は今も隆起を続けているが、未だ地震前の地面の高さを取り戻していないという。
東北大学大学院理学研究科、海洋研究開発機構、東京工業大学は9月27日、3者および東京大学地震研究所、南洋理工大学、南カリフォルニア大学からなる合同研究チームが'11年東北沖地震後の地盤隆起の原因を解明と発表。余効変動の観測データとそれらを説明する数値解析から、現在も沿岸部で活発な隆起は、地震時に大きくすべった領域の一層深部での、余効すべりによって引き起こされていることを突き止めた。
合同研究チームはさらに、余効すべり(地震断層が揺れを起こさずゆっくりすべる)と複雑なマントル流動(水飴みたいな粘弾性緩和)の相互作用が今後の沈降の回復に大きく影響することを世界で初めて示した。このことは、人々の生活に直結する地面の鉛直変動の観測を説明するとともに、その将来予測においては、岩石の流動する特性や断層の摩擦特性及びそれらの相互作用を正確に考慮する必要があることを示しているという。
実験岩石学的知見に基づき、東北地方沿岸部の地盤隆起をモデル化することに成功した。合同研究チームの今回の研究成果は、アメリカ科学振興協会(AAAS)発行の『Science Advances』誌に掲載された。