「IoTにより有害獣の捕獲情報を通知、ワナの巡回を省く」

鳥獣による農作物の被害額は164億円。被害面積は5万3千ヘクタール、被害量は47万4千トンで、いずれも前年度より微減あるいは減少しているが、大きな数字であることに変わりは無い。2大窃盗犯(獣)はシカとイノシシ。各被害額は55億円と48億円で、サルでも9億円となっている。

そんな「全国の野生鳥獣による農作物被害状況について(平成29年)」をまとめた農林水産省は、Web上に「鳥獣被害対策コーナー」を設けて、現場に最も近い行政機関による取り組みを支援している。同コーナーで目立つのは、ICT(情報通信技術)の活用が進み始めていることだ。そして9月27日、マスプロ電工は、岡山県井原市の協力のもと、IoTネットワークを利用して、罠の作動を通知するシステムの実証実験Ⅱを開始した。

イノシシなどの有害獣を捕獲する箱罠の扉が閉まったとき、その情報をLPWA(省電力広域無線網)規格の一つであるSigfox通信を利用して通知する。「ワナの番人」は、窃盗犯が箱罠に入り檻が降りると、あらかじめ登録した携帯電話などにメールで知らせるシステムであり、捕獲担当者らが定期的に箱罠を確認に行くことを不要にするうえ、犯人(獣)確保のための、迅速な対応を可能にする。

今回の実証システムで利用するSigfox通信は、一度に送信できるデータ量は少ないものの、遠距離通信や乾電池のみで駆動する圧倒的な低消費電力を実現した新たな通信手段として注目されているという。マスプロ電工が提供する「ワナの番人」は、電源工事も不要で移設が容易。ランニングコストを抑えた運用が可能とのこと。

今年1月に愛知県日進市および日進市猟友会とともに行った実証実験Ⅰでは、25日未明にイノシシ一頭を捕獲した。ワナの番人について、従来檻の定期巡回をしていた同猟友会は、このしくみを導入後は捕獲メールが通知されたときのみの確認で済み、作業の効率化が図れたとしている。