「ICT農業、IoTにて野生のイノシシ自動捕獲作戦」

全国有数の生産量を誇るモモ、プラムをはじめとした果樹や野菜が野生イノシシなどによる食害を受けている。その町の被害地域は近年、中山間地域から平坦部の集落周辺の田畑にまで拡大。人的被害の発生も懸念されている。

農林水産省がまとめた「全国の野生鳥獣による農作物被害状況(平成29年度)」によると被害総額は164億円。被害面積は5万3千haで、シカとイノシシが55億円・48億円といった大損害を生産者に与えている。野生鳥獣による農作物被害の低減には、捕獲による個体数の削減、緩衝帯設置などの生育環境の管理、侵入防止柵などによる作物防御を進めることが重要である。

そこで鳥獣被害対策実施隊による有害鳥獣の駆除や侵入防止柵の整備、電気柵の導入支援など、多様な被害対策を実施しているが、狩猟者の高齢化による捕獲作戦の担い手不足や、わなの定期的な見廻り負担など、新たな課題への対策も急務となっているという。福島県国見町KDDIは、深刻な農作物被害をもたらしている野生イノシシによる被害低減を目的として、IoTを活用した自動捕獲の実証実験を開始した。

一度の捕獲頭数の増加や、わなを回避する個体の発生防止など、捕獲の効率化を実現するという。両者およびKDDI総研は昨年、IoT遠隔監視カメラを活用してわなの巡回見廻りなどを効率化する取り組みを実施していて、今回これをさらに拡大し、町内に設置した大型の囲いわなをスマホやタブレットなどから遠隔監視・操作する機能に加え、わな内外の獣の状況を判別して自動捕獲する機能を搭載したIoT自動捕獲システムを導入する。

今回の実証実験は、両者が昨年末に「地域活性化を目的とした連携に関する協定」を締結した取り組みの一環だという。国見町とKDDIは、今後も、相互連携と協働による活動を推進し、ICT(情報通信技術)を現場展開するなどして、地域の活性化を図っていく考えだ。