"パーソン・センタード・ケア"のリビングラボを官民共同で実証する

トム・キッドウッド氏が提唱し、'90年代に英国で確立された。パーソン・センタード・ケアは、医学モデルに基づいた認知症の見方を徹底的に再検討し、認知症の人の立場で「その人らしさ」を尊重するケア実践を理論的に明らかにし、世界の認知症ケアを変革した理念である。

アマゾンなどで入手できる彼の著書の紹介文はそのようにいう。日本の10万人超都市において、全国で2番目の高齢化率(36.3%)の福岡県大牟田市は、周りの人とのつながりの中で「その人らしい暮らし」を統合的に捉える「パーソンセンタード」の人間観に基づいて20年近くに渡り、福祉・医療現場で「本人がどうしたいのか」を常に模索し、向き合い続けてきたという。今年度には「SDGs未来都市」に選定されている。

日本の20年先を行く10万人都市による官民協働プラットフォームを活用した「問い」「学び」「共創」の未来都市創造事業(提案資料:官邸PDF)を進めている。超高齢社会の先進都市である同市、大牟田未来共創センター、NTT西日本NTTの4者は、地域と企業が新しい形で関わり合う「パーソンセンタードリビングラボ」による社会課題解決の共同実験を8月30日に開始した。

地域の未来を上述の人間観に基づいて捉え直す同ラボのしくみのうえで、NTT研究所の社会課題解決プロセスの知見に基づきプロセスを設計し、NTT西日本やパートナーらのIoTテクノロジーなどを活用しながら、同市における社会課題の解決に取り組む。共同実験では、誰もが潜在能力を活かし、生きがいを持って繋がりあう社会を見据えている。

健康や予防に関心のある住民や住民らを支援する福祉関係者と共に対話ワークショップを複数回行う中で、それぞれの人の持つ「その人らしい暮らし(ウェルビーイング)」のあり方の検討やその暮らしを支えるプロトタイピングを行いつつ、住民各位のウェルビーイングな暮らしの実現をめざすという。