消防隊員の暑熱順化トレーニングをモニタリングする

年々夏の暑さが酷くなっている。日本では令和元年、5月の熱中症による救急搬送が約4,500人、昨年同月比で2倍になっていて、その後冷夏の影響で患者数は減ったが、来年も「熱中症予防強化月間」が8月まで延長されるだろう。

環境省の「熱中症予防情報サイト」や消防庁の「熱中症情報」をみながら我々市民は明日を憂うだけだが、火災から身を守る防護衣料を重ね着していて、熱が体内深部に蓄積される危険性が高い、消防隊員は、今日も市民と社会のために働いてくれている。夏が始まる前には、徐々に熱中症を起こしにくいカラダにする「暑熱順化」訓練も行っている。

それでも夏場の熱中症対策が喫緊の課題である。活動中の隊員が着用する消防服内の温度計測と、医学的な見地と検証に基づく深部体温の予測から熱中症リスクを予知する――ウェアラブルデバイス内蔵の「スマート消防服」による安全警報システムを開発し、'17年には大阪市立大学との共同研究により、世界で初めて、深部体温の予測による熱中症リスクの予知に成功した。

帝人は今年8月、暑熱順化トレーニング用のモニタリングシステムを開発したと発表。高温・過酷な状況下で消火活動にあたる消防隊員向けに、その商品化を進め、'20年度にレンタル展開を始めるとした。同社と同大学が消防局等の協力を得ながら蓄積したデータを活用し、開発したアルゴリズムでトレーニング中の深部体温を予測、熱中症リスクを予見しつつ、体力状況に応じた効果的な訓練の計画・実施・管理が可能になるという。

同システムでは、防火服と暑熱環境再現トレーニングウェア(開発:帝人フロンティア)の胸部に名刺大のセンシングデバイス(帝人グループのインフォコムと共同開発)を配置。これにより活動量および衣服内温度を測定することで深部体温の予測を行う。隊員のデータは即時パソコンに送信され、管理者はデータを一元管理、時系列でそれらを確認可能だという。