糖尿病性腎症重症化メカニズムをAI解析、予防法の開発も

日本は世界第2位の人工透析大国である。台湾に次ぐ、33万人超の透析患者数はわが国人口の約380分の1に匹敵する。なかでも、糖尿病性腎症に起因する透析患者数が最も多く、全体の4割以上を占めているという。

日本透析医学会'17年末集計「わが国の慢性透析療法の現況」第1章PDF資料)に右肩上がりの患者数推移が示されている。人工透析が必須になれば患者のQOLが低下する。だけでなく、年間約500万円/人の医療費負担、国全体では約1.6兆円/年の公的医療費が必要となる――。ゆえに糖尿病性腎症の重症化を予防することは、健康寿命の延伸のみならず、医療保険財政を健全化するうえでも喫緊の課題だという。

金沢大学医薬保健研究域医学系の研究グループ、東芝東芝デジタルソリューションズは、人工知能(AI)を活用することで、透析導入および重篤な合併症を引き起こす可能性がある糖尿病性腎症の重症化メカニズムを解明して、精密医療を実現するための共同研究を開始した。

3者の研究では、金沢大学が保有する長期経過観察と腎生検――腎臓病患者に正確な診断をつけ最適な治療法を決定する、腎臓の組織の一部を採り顕微鏡で評価する検査方法――で診断した糖尿病性腎症例の臨床・病理情報を用いて、同大学の高度な医学的知見と東芝デジタルソリューションズのアナリティクスAI「SATLYS™」の活用により、上記メカニズムの解明を目標にして研究開発を行う。

東芝グループは「超早期発見」「個別化治療」にかかる精密医療を中核とした医療事業への本格的な再参入を表明していて、今回、アナリティクスAI「SATLYS」により、糖尿病性腎症患者を複数のパターンに分け、リスクごとに詳細に層別化・体系化された最適な予防法の開発が期待できるという。疾患の早期治療・進展予防、さらには病状の悪化を防ぐ可能性を見いだすことにより、患者のQOL向上も目指していく構えだ。