製油所をインダストリー4.0の通信規格システムでサイバー防衛する

製造現場を中心にあらゆるモノがネットにつながる「IoT」技術の導入が進んでいる。昨今、生産性の向上などで重要なIoTをはじめとしたデジタル変革の広がりとともに、社会インフラにおいてサイバー攻撃の脅威が高まっている。

'15年と'16年にはウクライナで発電所へのサイバー攻撃が原因と思しき大規模停電が発生。実害を目の当たりにして世界は震撼――。日本では、NISCから「重要インフラにおける情報セキュリティ確保に係る安全基準等策定指針」(第5版PDF)が示されている。

重要インフラ事業者には、セキュリティリスクの低減等を戦略的に講じることと、重要インフラサービスの提供継続に資する適切な態勢の整備とが求められている。今月8日、出光昭和シェルは、サイバー攻撃から製油所を守り、国内のエネルギーセキュリティを強化するために北海道製油所、千葉事業所、愛知製油所、徳山事業所のヒストリカルデータベースのほぼ全ての通信方式を刷新したと発表した。

インダストリー4.0(ドイツの製造業向け国家プロジェクト)における唯一の推奨通信規格であり、複数ベンダーのアプリやOS間を高いセキュリティで通信できる次世代の通信規格「OPC-UA」を用いるシステムへ更新した。4事業所では、製造現場の制御システムとITシステム間のインターフェースを統一し高度な生産体制を構築できるうえ、外部からの不正アクセスによる悪質な攻撃の危険性を大幅に低減。

複数拠点からなる大規模生産システムの主要な通信方式を「OPC-UA」とした世界初の事例だという。同社は製油所の効率化・競争力強化を目的に、IoT技術を活用した取り組みを推進中。業界に先駆け製油所のリアルタイム操業マネジメントシステム「XHQ」を'08年に導入、今年はAIを活用した配管腐食システムの実証実験にも参加していて、今後も製油所の高度化およびセキュリティ強化に取り組んでいく構えだ。