現行LTEよりも100倍速く、超低遅延、多数同時接続といった特長を有する次世代通信規格(5G)の商用化が、日本でも目前に迫っている。5Gシステムは、遠隔医療および自動運転をはじめとした技術による社会基盤、そしてIoTを軸に産業構造をも大きく変革するものと期待されている。
あらゆるモノがネットにつながるIoT時代のICT(情報通信技術)基盤として、高精細映像の伝送、多数のセンサーの活用など、様々な分野での新たなサービス提供に活用されるだろう。高速大容量通信が可能な28GHz(ミリ波)帯を含む周波数割当を申請した国内キャリア4社による、5G特定基地局の開設計画(総務省PDF資料)を紐解くと、その関連設備への投資総額は'24年末までに1.6兆円超。
指向性が強く、伝播距離が短い28GHzの基地局は、既にミリ波での商用サービスが開始されている米国をみても、現行通信規格のそれよりも数百倍/面積の個数が必要だとわかる。日本では今後、携帯基地局やCPE(顧客構内端末設備)向けに、その重要な構成要素であるミリ波RF-IC・RF(高周波)モジュールの需要の飛躍的な拡大が見込まれるという。
フジクラは、米国IBMから5G関連のミリ波RF-IC技術のライセンスを受けることで合意。本邦初となる次世代のミリ波RF-IC製品を開発すると今月8日発表した。IBMは同技術の研究開発を14年以上にわたり行い、高周波回路設計にかかる数々の賞を得ている。一方、フジクラは、光通信分野で蓄積した電磁波応用技術や材料技術等を総合して、アンテナ、RF回路設計及び基板実装に関する技術開発を進めてきたという。
同社はIBMの技術サポートを受けてチップ開発を進め、同じ帯域でより多くのモバイル利用者を収容し、かつ今日よりもはるかに高速で、有線ブロードバンド並の通信速度を提供できる携帯基地局実現に向け、キーデバイスの提供をめざす構えだ。