食の研究において発がんリスクを説明できるAIの実用化に向けて

さまざまな生活習慣が複合的に関与する。がんは生活習慣病であり、食事とも深く関係すると考えられている。近年、ヒトを含む動植物のゲノム(全遺伝情報)解読が進み、他の遺伝子の発現を調整する微小なリボ核酸(マイクロRNA)の研究も盛んに行われている。

2013年来、食でがんを予防することを目的に東京医科大学と、血液中に存在するマイクロRNAの発現量と将来がんになるリスクの関係を研究している。がんの予防の観点から、マイクロRNA発現変動に対して特定の食成分が与える影響などにも取り組んでいるという。キユーピーは、同大学および横浜国立大学と共同してNEDO「次世代人工知能・ロボット中核技術開発」プロジェクトに応募――。

今月7日、マイクロRNAのデータ解析に必要な人工知能の研究である「生体データを用いて発がんリスクを説明できる"高信頼性進化的機械学習"の研究開発」が、同プロジェクトの"AIの信頼性に関する技術開発事業"における新テーマに採択されたことを公表した。キユーピーはこの研究開発を通して、健康寿命延伸に貢献できる技術の実現をめざすという。

既存AIで上記解析を行うには膨大なデータが求められるうえ、その処理過程を人が理解することは難しく、解析しても判定根拠を示すことが困難である。そこで、機械学習の精度や説明性を高めた『説明できるAI』の開発を横浜国立大学が担い、その医学的評価を東京医科大学が実施し、データの収集や実用化をキユーピーが担当する。

3者の協同プロジェクトによって、発がんリスクとマイクロRNAの関係性が明らかになると、特定の食成分との関連性の研究を進められる。食事上の改善行動を促すことが可能になるという。同社はいずれ血液中のマイクロRNAを測定して将来の発がんリスクを判定することと、食生活の提案により適正なマイクロRNAパターンに導くヘルスケアサービスの展開とを目標にしている。