世界的に増加傾向にあるうえ死亡率が高い。肺がんは早い段階では自覚症状を伴わないものの、その治療には早期発見が重要であり、集団健診における胸部X線検査は大きな意義を有する。
一方で、X線検査画像から診療上の所見を得る読影作業は医師に負担を強いる。たとえば福島県では、肺がん検診を受けた年間約20万人分の読影を少数の医師が行なっていて、年に4,000件以上の読影をこなす医師もいる。地域によっては読影する医師が不在であり、そうでなくても日常診療を行いながらの長時間にわたる読影作業は、作業効率の低下や陰影の見過ごしなどが懸念され、医療安全管理上も課題だという。
みずほ情報総研は、福島県立医科大学と共同研究契約を締結し、肺がん検診における胸部X線検査画像の読影支援AI(人工知能)の実用化を目指すことを7月29日に公表した。今回の契約締結により両者は今後、①肺がん検診データの収集、②読影支援用AIの開発('20年~)、③読影支援用AIの精度評価ならびに医師の負担軽減効果の測定('21年~)について、段階的に研究を進めていく。
集団健診による胸部X線検査画像の読影に関する高精度のAIを、共同開発して肺がん検診業務へ適用する。CTやMRIよりも安価で広く普及し利用されている胸部X線検査にAIを活用することに大きな意義がある。共同研究では、一次読影の際にAIの判断を参考に医師が診断を行うことで、医師の負担軽減と労働時間の短縮を図る。
また、陰影の確認にAIを活用することで、確認に要する時間を短縮するとともに、一次読影後に異常所見の疑いがあった検査画像を複数の医師で合同判定する業務に医師の比重をシフトすることで、肺がん検診の質向上を具現化する。さらに、物理的な距離にとらわれずに、遠隔での肺がん検診業務支援を行うことも検討し、専門性の高い読影医が不足する地方部における肺がん検診格差の解消を実現するという。