MEMS加速度センサーを高感度かつ低ノイズ化、医療~産業分野に

我々がふだん使っているスマホにも組み込まれている。加速度センサーはモニタリング用途の広がりとともに、今後も大幅な需要増加が見込まれる。小型で量産可能なそれらは、製造プロセスが確立したシリコンMEMS(微小電気機械素子)技術によるものだ。

が、加速度センサーの機械構造に由来する雑音は可動電極(錘)の質量に反比例し、小型化と低雑音化はトレードオフの関係にある。さらに感度はおおよそサイズに比例するため、小型化と高感度化にもトレードオフが生じる。加速度センサーの高分解能化には低ノイズ・高感度性能が必要なため、従来の小型シリコンMEMS加速度センサーでは1マイクロGレベル(G=9.8 m/s2)の検出が困難であったという。

東工大NTT ATは今月23日、複数の金属層で形成される積層メタル構造を用い、超低雑音・超高感度特性を有するMEMS加速度センサーの開発に成功したことを公表した。従来のMEMS技術では困難だった1μGの高分解能の検知を達成したという。両者の研究グループは、過去に錘を10分の1以下に小型化する手法を提案していて、今回、この技術をさらに発展させた。

複数の金の層を重ねて錘を形成することで、面積あたりの錘質量を増やし、錘質量に反比例するノイズを低減した。その錘の反りも低減することで、4 mm角チップ面積を最大限利用した静電容量センサーを実現し、感度(静電容量変化/加速度)を増大した。結果、従来の同サイズセンサーとの比較で感度100倍以上、ノイズ1/10以下を達成。超小型センサーによる1μGレベルの検出の見通しを得た。

高分解能化・汎用化における革新的な技術であり、医療・ヘルスケア、インフラ診断、移動体制御、ロボット応用など様々な動き検知用途において新しいデバイス・システム開発につながると期待される。研究成果はセンサー&マテリアル誌に掲載され、同日PDFがオンライン公開された。