皆さんはご存知だったでしょうか。千葉県はニホンナシの産出額150億円、栽培面積1,520haといずれも全国1位を誇る――が、その生産量は減少傾向にあるということを。
減少の要因の一つとして、重要病害であるナシ黒星病の影響が挙げられる。その対策は、気象条件を踏まえて、適切なタイミング・時期に、適切な回数の薬剤散布を行うこと。だが、温暖化等に伴う気候変動の影響で、暦日単位で計画された薬剤散布では防除が難しくなっていて、防除タイミングの高度な判断が必要となっている。ナシ黒星病の適切な防除では、農地ごとの環境データの可視化や、細やかな状況予測などを要する。
そこで千葉県農林総合研究センターが地域のアメダスデータに基づいたニホンナシの黒星病発生予測・防除支援技術「梨なび」を確立した。けれどもそれはパソコンの表計算プログラム上での利用にとどまっていたという。同センター、NTTデータ経営研究所、千葉県果樹園芸組合連合会なし部会、船橋市経済部農水産課、イーエスケイ、NTT東日本千葉事業部の6者は、総務省事業を活用して、「ナシの病害予測システム」を開発する。
スマート農業に関する取り組み一環として、ニホンナシの黒星病について、発生予測に基づく防除支援技術を携帯端末アプリに搭載し、ナシ園ごとの微気象を踏まえた病害虫発生予測と防除要否の情報を生産者に提供する実証事業を進める。今回、「梨なび」をスマホ等で簡単に利用できるようにするとともに、より正確な農地の微気象情報を得るために、農地ごとに気象センサを設置し、「微気象ネットワーク」の構築を目指す。
そして、病害虫発生予測と防除要否のナビゲーションを提供する。アプリの開発によって、生産者は農地ごとの気象情報に合わせた作業誘導システム「梨なび」を身近に利用できるようになり、適期・的確な防除、防除回数の削減、収穫ロスの抑制、減農薬栽培が可能になるという。