医療分野で"リフト効果"の最適化に成功
広告配信や投薬などにおいて、ユーザーへの介入と、購買行動や予後等との「因果関係」を明らかにする研究分野。「アップリフトモデリング」では、介入による純リフト効果が予測できれば、ユーザーごとにその効果を事前に見積もることにより、効率の良い介入戦略を立てられる。
従来のアップリフトモデリングでは、ユーザーを広告配信の実施/非実施集団にランダム分けした上で、各広告効果を比較するA/Bテストを要した。広告クリエイティブ(画像)などでのそれとは異なり、ランダム配信によるA/Bテストは、対象ユーザーへ興味のない広告が行われる。無駄な広告配信によるユーザー体験の悪化や、興味のある広告に触れられない機会損失が生じる。
A/Bテストなしにアップリフトモデリングを行うことは現実的に困難であったという。ソネット・メディア・ネットワークス(SMN)の研究開発組織「a.i lab.」は、東京工業大学工学院 中田研究室との共同研究により、ユーザーへの介入効果を最適化するアップリフトモデリング手法を開発。従来A/Bテスト不要とされていたTransformed Outcome手法の欠点を解消する新たな手法「SDR-UM」を提案した。
新手法を心臓カテーテルによる生存率への影響を調査した公開データ(米ヴァンダービルト大学Biostats)に適用したところ、右心房カテーテル治療によって生存率が高くなる患者集団(20%)を特定することに成功した。SDR-UMにより、右心房カテーテルの実施を個別化することができれば、全体の患者の生存率の向上に繋がるだろうという。
成果はカナダで開催された「SDM19」で発表。リフト効果の高いユーザーへ広告配信してROIを最適化するだけでなく、当該ユーザーをSMNの「VALIS-Cockpit」によって可視化しインサイトを抽出するなど、より幅広いマーケティング施策への利用が想定されている。