魚よりも肉が好き!という若い人が多いうえに、高齢者の肉食効果がテレビ番組などで盛んに取り上げられている。そのような世相の一方で、肥育農家の減少もあり、子牛の市場価格が高騰している。
近年、分娩事故によって子牛を亡くしてしまうことは、酪農家および肉用牛繁殖農家にとって、大きな経済的損失であるばかりでなく、精神的な苦痛にもなっている。農場では安全に子牛を取得するため、なるべく分娩に立ち会い、難産が予想されるときには獣医師に依頼するケースも増えている。母牛の分娩予定日には見回りや待機を行う。しかし実際の分娩は予定日から数日前後することが多く、深夜から早朝に及ぶ場合もある。
農家への負担が大きいのに、分娩事故は決して少なくないのが現状だという。デザミスと、NTTテクノクロスは、乳用牛および肉用繁殖牛の分娩兆候を検知するアルゴリズム(計算手法)を共同開発した。両社はデザミスが提供している牛の行動モニタリングシステム「U-motion®」の新機能として、同アルゴリズムを用いた「分娩アラート」の実証実験を客先で4月から行っていて、これを年内に提供開始する予定だ。
U-motion®は、牛に装着した専用センサが「採食」「飲水」「起立」「横臥」「歩行」「反芻」などのデータを24時間収集し続ける。十分な観察時間が確保できない状況でも、集積した膨大な行動データを人工知能で解析し、発情兆候や健康状態を検知。農場管理をサポートする。しくみに追加する新機能はこれまで、試験頭数の9割以上の牛で、アラートの発報から1~6時間以内に分娩が認められた成果を上げている。
分娩事故をなくしたいとの想いはすべての生産者に通ずる。分娩アラートで一頭でも多くの牛を救おうとする両社のチャレンジに賛同し、実証実験への協力を決めたという、新村畜産では、この度の新技術が確立されたのち全国の畜産農家に広がっていくことを願っている。