糖尿病性腎症の早期発見に向けて、リスク因子をAI分析

厚生労働省によると平成28年度の国民一人当たりの医療費は33万2千円。これと比べても高い水準で、県民の健康寿命延伸と健康増進が重要な課題であり、県医療費の約3割が生活習慣病に由来する。

そして、人工透析の約4割を占める糖尿病性腎症の早期発見・支援、重症化の予防が急務になっているという。大分県から委託を受けた仙台白百合女子大学とともに、同大学との保険事業の共同研究実績を有するNECは、昨年度、同県全域の国保データベース(KDB)を活用し、糖尿病性腎症の新規発症につながるリスク要因を、AIを用いて分析した。

今回の取り組みは、同県による「産・官・学連携保健・医療・介護保険等データ活用による医療費分析事業」(PDF資料)の一環で、仙台白百合女子大学・鈴木寿則准教授のレセプトや健診データの分析に係わる知見と、同社の最先端AI技術群の1つである「異種混合学習技術」を活用し、2型糖尿病患者の重症化につながる因子分析を行ったものだという。

県内の2型糖尿病に罹患し、かつ糖尿病性腎症を発症していない約3000人を対象に、KDBの健診データ、医療レセプトデータを連結し、AIが分析した結果、年齢やBMI、血圧などの62の因子から、糖尿病性腎症の新規発症に関連あるものとして、HbA1cや血清クレアチニンなど10の因子を絞り込んだ。これらについて、非発症者と比較すれば新規発症者において有意な傾向が認められた(分析結果:上記PDFの83ページ)。

すなわちAIが既存の知見と整合性のある因子を見つけられたことになる。大分県では、当該因子に基づき対象者を絞り込み、各保険者の効果的な個別指導につなげることで、保健指導の高度化と医療費の適正化を図るという。NECは、仙台白百合女子大学と連携し、引き続き保健・医療・介護分野におけるデータ利活用を進め、自治体における健康増進と医療の効率的な提供を推進していく考えだ。