将棋AI、今度は棋譜を自動生成して人を助ける仕事へ

神武以来の天才と称された「ひふみん」こと加藤一二三名人がそれまで持っていた、史上最年少棋士記録を64年ぶりに塗り替えた藤井聡太さん(現7段位)の活躍によって、空前の将棋ブームが到来した。昨今、藤井7段も研究に利用しているAI(人工知能)の進化は凄まじい。

アマチュア棋士は最先端のAI将棋に歯が立たず、にわか将棋ファンなどはそれと対戦しようものならコテンパンに打ちのめされてしまう。AIはそもそも人間よりも遙かに速いスピードで機械学習し、最善手を見つけられる代物であり、人間がツールとすべきその中核技術は現在、それが最も得意とする画像認識・解析・分析を軸に、産業から医療分野にまで活用の幅が広げられつつある。

6月20日、日本将棋連盟リコーは、将棋対局時の記録係の不足に対応するために両者が開発した、AI技術を活用し棋譜を自動生成する「リコー将棋AI棋譜記録システム」(リコー棋録)について、7月よりシステムの実証実験を共同で行うと発表した。第9期リコー杯女流王座戦本戦トーナメントからその実験を行い、来年4月以降の本格運用を目指すという。

将棋連盟では年間およそ3,000超の全ての対局で棋譜の記録と計時が記録係――プロ棋士を目指している奨励会員の手によって主に行っている。近年は高校・大学に進学する奨励会員が増えていることや、対局数の増加などにより、記録係の担い手が慢性的に不足する事態となっていて、いずれ将棋連盟と各棋戦の主催者にとっての重要資産「棋譜」が残せなくなるだろう。

危惧に立ち向かう「リコー棋録」は、天井から動画撮影した対局盤面をAIソフトに取り込み解析することで、リアルタイムに棋譜が生成されて将棋連盟の「棋譜データベース」に取り込まれる。リコーが培ってきた画像処理技術とAI技術を活用した同システムは、将棋連盟における「働き方改革」を支援し、将棋文化の発展に貢献していくという。