およそ誰もが理科の実験で、プリズムを使って太陽光を各色波長に分解したことがあるだろう。分光学の歴史は古く、固体撮像素子が開発されて以降、ある範囲面の画像データを採取し、各位置に対応した分光情報を解析できるようにする、スペクトラルイメージングの活用が盛んになっている。
6月1日、キヤノンメディカルシステムズは、新たなデュアルエナジー技術「スペクトラルイメージングシステム」を搭載可能なエリアディテクターCT「Aquilion ONE / GENESIS Edition」の国内販売を開始する。デュアルエナジーは、管電圧の異なる2種類のX線を用いてコンピュータ断層撮影する技術――。
スペクトラルイメージングシステムにより、従来のCT画像と比べ、アーチファクトの低減やコントラスト向上等の画質改善効果が得られるとともに、仮想単色X線画像の作成や、様々な物質の弁別が可能となるという。同システムは独自の撮影技術「スペクトラル・スキャン」と再構成技術「スペクトラル・リコンストラクション」で構成されている。
前者の技術では、1回のスキャンにおいて高低2種の管電圧を高速で切り替えての撮影、および自動照射制御(AEC)との併用が可能。寝台の天板移動無しで最大160mmの撮影ができるスペクトラル・ボリュームスキャンと、最大80mmの幅で天板を移動しながら連続回転して撮影できるスペクトラル・ヘリカルスキャンに対応し、体型や部位に合わせて適切な撮影モードの選択と線量調整を行える。
また、ディープラーニングを用いて設計された画像再構成法である後者では、上記撮影技術によって得られた投影データ全てを活用して、物質情報に基づくCT画像を作成する。これにより、物質弁別画像の生成とノイズ低減効果が得られる。今回のシステムは、AEC連動による照射線量の最適化や、スキャンとの連動による解析ワークフローの高速化を実現するという。