匠の技をAIで継承、まずはマグロの目利き力から

少子高齢化を背景に様々な社会的問題が浮かび上がり、事業承継や技術・ノウハウの伝承にかかる課題が深刻化している。この国のあらゆる伝統産業において、その長い歴史のなかで培われてきた職人の技は、人類の経験知が集積された貴重な知識資源である。

また、そこで蓄積されたノウハウは、「職人の勘」と形容されるように、体系化および言語化がされ得ない暗黙知であるとされ、その担い手である職人が高齢化の一途を辿るなか、存続が危ぶまれているという。ISIDのイノラボ(オープンイノベーションラボ)と電通は、熟練の職人が持つ技能の継承が課題となっている様々な産業において、その技能を人工知能(AI)などの技術を活用して継承する取り組み「プロジェクト 匠テック」を開始した。

今回、その取り組みの一環として、双日と共同で、後継者不足が深刻なマグロの目利き技能を継承するため、天然マグロの尾部断面画像からAIが品質判定を行うシステム「TUNA SCOPE」(商標出願中)を開発。その実証実験を3月に、同システムのβ版をマルミフーズの尾切り検品業務に適用し、判定精度を検証し、さらに最高品質と判定したものを「AIマグロ」(商標出願中)としてブランド化することによる市場性の検証も行った。

結果、職人と85%の一致度でマグロの品質判定に成功した。そして「AIマグロ」を、「産直グルメ回転ずし 函太郎Tokyo」で5日間にわたって提供し、約1,000皿を販売後のアンケートでは、注文客の89%から同マグロに高い満足度を示す回答が得られたという。

今後も同システムのさらなる精度向上と実用化に向け、教師データの継続的な収集、解析アルゴリズムの最適化に取り組み続けていく。電通グループは、「TUNA SCOPE」の開発で得られたノウハウを、他の様々な産業分野における目利きの技能継承に応用していくことで、社会や企業の課題解決に貢献していく構えだ。