複数の中低層建物にてモニタリング、地震直後の構造健全性を評価する

南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生の可能性が高まっている。近年、BCP(事業継続計画)の観点から、大地震発生後に建物や工場などの使用継続を判断するシステムの導入が年々増加している。

が従来のシステムでは、ダメージ箇所の推定用に、建物に多数の加速度センサーを設置する必要があり、初期導入費用が高くなる傾向にあったという。大成建設は、'17年に発表した「T-iAlert® Structure」の拡張版として、中低層建物を対象に地震直後に複数建物の構造健全性を一括して評価し、建物の揺れのデータや被災履歴を含む各種関連情報をクラウド上で一元管理できるモニタリングシステムを開発した。

同社の支店などに試験導入し、データ計測および構造健全性の評価精度、システムの安定性・操作性を検証するための実証試験も開始したという。今回のシステムは加速度センサーから得られたデータを基に、独自手法(特許出願済)を用いることで、建物に生じた変形角(層間変形角)を推定。その結果から地震直後の構造健全性を「安全」「要点検」「危険」の3段階で表示する。

上記センサーは無線タイプのため、これまで数日かかっていた設置作業を半日程度に短縮でき、設置台数が少ないことから、計測機材の初期導入費用を大幅に削減できる。システムでは、複数建物の構造健全性をモニタや携帯端末に表示し、一括でどこからでも建物の状態を把握できるため、地震発生後早期に、各建物での事業継続・事業再開の可否や、初期対応の優先順位などが判断可能となる。

さらに、建物毎に過去の計測・分析データをクラウドに蓄積して、一元管理するため、長期間にわたり建物の被災履歴が把握できるという。同社は、上記実証試験の成果を踏まえ、しくみの改善を図るとともに、同システムを顧客ニーズに合致したBCP支援ツールとして、様々な用途の建物の新築・改修に対して積極的に提案していく考えだ。