海外の自動車法規に、高精度なAI自動翻訳で迅速対応

自動車及び自動車部品の設計、製造、輸出においては安全確保や環境保護など、様々な観点から、各国法規の要件を満たすことが求められている。それらを満足するためには、頻繁に改訂される各国の法規情報を迅速かつ正確に理解する必要がある。

現状はしかし、法規翻訳を人が行っていて、精度確保に時間が掛かっている。法規情報の高速かつ高精度な翻訳は、自動車業界にて業務効率化の鍵になっているという。NICTは、 https://www.nict.go.jp/press/2019/04/23-1.html
>トヨタ
と、自動車法規を対象としたニューラル英日・中日自動翻訳の共同研究を実施し、実用度向上を確認したと4月23日発表した。

同機構は'17年より総務省と連携して、ニューラル翻訳(NMT:脳の神経回路網を模した機械学習)技術に不可欠なデータを集積する翻訳バンクを運営し、多数の組織からデータ提供を受けて、翻訳ソースの蓄積と活用を進めてきた。また、トヨタとは昨年6月から「自動車法規文章の自動翻訳エンジンの研究開発」をともに行ってきた。

そして今回、トヨタ提供の英日・中日翻訳データを基に、汎用英日・中日NMTエンジンのアダプテーション(適応力調整)を行い、実用度を向上させた。結果を同社が評価したところ、英日翻訳で約24%、中日翻訳では約11%の実用度アップを達成していたという。トヨタではさらに実用度向上の検討を継続することとなった。一方、NICTは、片方向であった英日・中日翻訳を双方向にすることを目標にしている。

数万点に及ぶ部品のメーカーを含めた自動車業界全体への波及効果は絶大である。各国語の法規の翻訳は、輸出される全ての生産物に対して存在し、その高速化と高精度化は他業界でも必須となり、翻訳バンクによって実現されていくことが期待されるという。NICTは、この度の技術をマニュアルなど法規文以外の多種多様な文献に展開するとともに、多言語化を進め、自動車産業におけるあらゆる翻訳の高効率化も目指している。