阪神淡路大震災の教訓、VRで継承する

1995年1月17日、午前5時46分。急速に近づいてくる地鳴りで目が覚めた、途端に天地がひっくり返ったと思った。窓は黒く、恐怖で身動きはできなかった。日の出とともに両親の元へ向かう車のラジオが数多の惨状を明らかにしつつ、馴染みある阪急電車の脱線や、駅舎の倒壊を告げていた。

水のペットボトルを鞄に詰め込み、国道43号線を徒歩で顧客の元へ向かっている最中、目にした光景は全て現実のものだとは思えなかった。メリケンパーク、南京町、フラワーロード、三宮高架下の靴屋に行くとき使っていた、あの阪神高速道路がずたずたになり、周辺の木造家屋は皆ぺしゃんこになっていた。泥だらけの道を越えて、辿り着いたデータセンターには守衛さんがひとり、建屋内の大型コンピュータ群は床ごと大魔神に薙ぎ払われていた――。

震源地からも神戸市内からもかなり離れたところで暮らしていた筆者でさえ、震災直後から約1年後の模様まで、自分や友人知人、喪章とともに働く人たちの体験を交えて、ここに書き尽くせないほどに記憶している。が、風化させつつある。東京で、神戸ルミナリエが丸の内イルミネーション程度の扱いであり、後発のそれでも18年目を迎えたことを思えば、我々中高年は反省し、若い世代にその歴史的意義を伝えていくべきだろう。

当時の資料を多数保有しているものの十分に活用できていないという。兵庫県神戸市と、KDDIは、大規模震災の教訓を継承し、防災意識を高める仮想現実コンテンツ「あなたが伝える阪神・淡路大震災-復興VR」を共同開発した。同コンテンツは、神戸市で開催されるイベント「078」の参加者に向けて、4月28・29日に視聴体験が実施される。

巨大地震前と後の写真や動画素材を360度に配置、復興過程と現在の様子、教訓を継承するメッセージ、防災クイズで構成されたVRコンテンツは、新しい防災教育ツールとして地域や学校での活用が予定されている。