医療AI、間質性肺炎の診断を支援する

酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する肺――。その肺胞に炎症や損傷が起こり、肺胞壁(間質)が厚く硬くなる、「間質性肺炎」は主としてびまん性を有し、呼吸困難、換気不全、発熱といった徴候を示す。炎症後組織の線維化が進み肺線維症となる場合がある(広辞苑より)。

間質性肺炎には、関節リウマチのような膠原病やじん肺、薬剤性肺炎など原因が明確なものと、原因が特定できない特発性間質性肺炎(IIP)がある。IIPは指定難病であり、その中でも最も多い特発性肺線維症(IPF)は、発症率が2.23人/10万人、有病率が10.0人/10万人と推定(出典:ATS Journals)されている。IPFを診断する有力手法の一つが胸部CT検査。

同検査手法では、複雑で多彩な異常所見の多いIPF発症の初期段階で病名の確定が難しく、CT画像の病変の性状を目視比較、経過観察しながら病名を確定して治療方法を選択していくこともある。IPFは、病気の進行に伴ってCT画像に写る病変の性状が徐々に変化。急激に病状が変化する「急性増悪」の予兆を早期発見することが重要である。

さらに近年、肺が硬くなるスピードを抑える抗線維化薬が市販され、その治療効果を画像上で定量的に評価したい医師のニーズも高まっているという。富士フイルム京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学は、人工知能(AI)技術を用いて間質性肺炎の病変を高精度に自動で分類および定量化する技術を共同で開発することに成功した。

同技術は、AIを活用したソフトウエアが、CT画像から肺野内の気管支、血管、正常肺および網状影やすりガラス影、蜂巣肺など、肺の7種類の病変性状を識別し、自動で分類・測定することで、間質性肺炎の病変を定量化するもの。そのうえ、肺野内における病変の分布と進行状態が詳細に確認できるよう、肺野を12の領域に分割し、その領域ごとに病変の容積および割合を表示するという。

両者は昨春から共同研究を開始。富士フイルムが開発した間質性肺炎の病変を分類および定量化するAI技術を、京都大学が保有する症例データに適用し、識別性能の評価と改善のフィードバックを繰り返し実施。各性状が取りうる画像パターンのバリエーションを分析し、一層改良することで、高精度な識別性能を持つ技術を実現した。

胸部CT画像に見られる種々の異常陰影の分類と定量化を行う技術は、「間質性肺炎の画像診断補助」、「病状経過におけるCT画像陰影の変化を定量値で客観的に評価」、「肺の12の領域ごとに病変の評価を行うことによる詳細な病状の把握」、「定量的、客観的な治療効果の判定」、「新規薬剤の治験における薬効評価指標への応用」、「間質性肺炎の病態解明や予後予測など臨床研究への応用」

それら多くの可能性が期待されると平井教授がいう。今般の技術について、富士フイルムは、'20年度中に画像診断支援機能としての実用化をめざす。