東京湾など船舶が輻輳する海域では、海上保安庁のVTS(船舶運航サービス)センターが、船の安全かつ効率的な運航を確保するための情報提供と航行管制を一元的に行っている。
それは世界的にも同様であり、海上交通を管理するセンターでは、VTSシステムから出される船同士の異常接近を警告するアラートをもとに、船舶への情報提供を行い、航行を支援している。が、船舶業務や、船舶とセンター間の意思疎通が複雑になるにつれて――。特に、シンガポールのような交通量の多い海域では、より高度に交通状況を分析し、船舶の動向を事前に検知・予測することが衝突リスクを軽減する上で重要になっているという。
富士通は、昨年4月よりシンガポール海事港湾庁(MPA)の協力のもとで進めてきた、シンガポール海峡の海上交通リスクを分析する実証実験を通じて、船舶同士のニアミスを予測するAI活用技術の有効性を検証した。結果、この「衝突リスク検知技術」により、管制官がリスクを認知するより前に、そのリスクをより高精度に定量化できることが確認できたという。
ニアミスの起こる10分前に、同技術が潜在的なリスクを検知し注意を促すことで、管制官が船舶への注意喚起等を行うリードタイム約5分を確保。人間が見落としがちな衝突リスクも正確に検知し、警告することもできた。さらに、動的リスクホットスポットの予測により、事象発生のおよそ15分前までに危険性を検知し、リスク回避に向けた具体的なアクションをとれることを認めた。
衝突リスク予測技術は富士通研究所のAI「ジンライ」を用いたものであり、VTSシステムへの適用によって予防的なリスク回避に貢献し、航行の安全性向上につなげられることがわかった。一連の成果をシンガポールにて、IALA・ENAV第23回委員会で発表するという。富士通の技術と取り組みは9日~11日「Sea Asia 2019」にて紹介予定とのことだ。