AIが変える日本の防災・減災対策 熊本市が防災・減災システムの実証実験開始

近年大規模な自然災害が多発しており、これまで蓄積してきた経験則や予測手法が通用しなくなるなど、新たな対応策検討の必要性が高まっている。被災時には、より人手不足が深刻化する。そこで期待されるのがAI(人工知能)による支援である。防災・減災に関してAIを活用する取り組みが進められている。

損害保険ジャパン日本興亜は、米国の防災スタートアップ企業であるOne Concern、ウェザーニューズと防災・減災システムの共同開発に関する業務提携を締結した。

3社は、2019年3月から熊本市において防災・減災システム開発に向けた実証を開始し、日本初のAI技術を活用した防災・減災システムの開発を目指す。損保ジャパン日本興亜と熊本市は、2018年8月日に「地域防災力向上のための相互協力に関する協定」を締結しており、今回の実証は同防災協定に基づいた取り組みとなる。

One Concernは「災害の発生前・発生時・発生後に人命と暮らしを守ること」をミッションに、AIなどの最先端のテクノロジーを活用した災害予測と防災・減災システムを提供している。米国では既にロサンゼルス市、サンフランシスコ市、シアトル市などの自治体が同システムを導入している。

3社は日本における地域防災力の向上の第1弾プロジェクトとして、熊本市において日本独自の防災・減災システム開発に向けた実証を開始した。日本初となる本システムでは、ウェザーニューズが提供する日本固有の過去の気象データと気象予測データを活用することで、高度かつ精緻な災害による被シミュレーションを行う。

このシステムでは、地域防災に関わる気象や建物などの各種データとAIを活用し、洪水・地震などの災害の発生前・発生時・発生後における正確な被害予測サービスとリアルタイムな被害状況についてブロック(区画)単位で把握できる。

災害発生前には、高度なAI技術を活用して災害危険性と地域の脆弱性を評価し、動的シミュレーションを用いた正確な被害予測シミュレーションを行う。防災・減災システムのユーザーは、これらのシミュレーションに基づき、効果的なBCP(事業継続計画)や防災計画の策定・見直し、自衛消防団・地域住民が参加するリアルな防災訓練の実施、災害時
おける避難場所や避難方法の見直しなど、災害発生前における防災・減災対策の強化が図れるという。

また、災害発生直後に提供される被災地域の被害予測サービスにより、リアルタイムで被害状況を把握でき、地域全体が受ける損害のインパクトが明らかになる。防災・減災システムのユーザーは、これらの情報をもとに災害の被害地域・被害規模を正確に把握し、高齢者や子供を優先的に救助するなど、災害発生時における効率的・効果的で迅速な初動対応が可能となり、被害の極小化にも貢献できるという。

災害発生後も被害状況の詳細を収集し、実際の被害データとして被害予測サービスに組み入れることで、地域の実情に合ったリアルタイムで正確な被害状況の把握にも活用できる。防災・減災システムのユーザーは、これらの情報をもとに災害からの早期回復へ向けた適切で効果的な復興対策を検討でき、災害発生後の地域レジリエンス(復元)力の向上にも役立てられる。

熊本市では2019年3月からの実証を経て、2019年9月には日本独自の防災・減災システムの利用を開始する予定だ。損保ジャパン日本興亜、One Concern、ウェザーニューズは、熊本市と連携し、同システムを活用した「防災・減災のまちづくり」実現の貢献に向け、取組みを強化していく。

また、今後このシステムと保険商品とを連動させたサービスや、SOMPOホールディングスグループでリスクコンサルティング事業を展開するSOMPOリスクマネジメントのノウハウも活用したBCPコンサルティングサービスを展開していく計画だ。