高度成長期に集中的に造られた大量の社会資本、港湾や道路、橋やトンネルなど公共諸施設への懸念が広がっている。日本では近年、それら一斉に老朽化する社会資本ストックを戦略的に維持管理・更新することが考えられている。
社会資本の老朽化対策情報は国交省ポータルサイトから得られる。がこのサイトに、鉄道の様々な施設についてのメンテナンス情報は少ない。鉄道はその事業会社によって、将来にわたる戦略的な維持管理計画が立てられ、日夜保守点検がされているためだろうけれど、その労力たるや計り知れないものがある。そこで今月25日、三菱電機は、同社のインフラモニタリングシステムが小田急電鉄のトンネル検査業務に採用されたことを公表した。
高密度3次元レーザーと高解像度ラインカメラ(高速シャッターで一度に1ライン:8,192画素×256画素の映像を撮る)を搭載し、社会インフラ点検業務の負荷を軽減する「MMSD®Ⅱ」による設備の計測・解析サービスを一昨年11月に開始した。同社のMMSDⅡが鉄道トンネルの検査業務に本格採用されるのは初めてだという。
今回、MMSDⅡを搭載した計測用車両は、時速約50kmで線路上を自力走行しながら、8Kラインカメラによる高解像度の画像データと、高密度レーザーによる毎秒200万点相当の高密度3D点群データを取得。従来目視で行っていたトンネルのひび割れ確認や、内空断面検査と同水準の検査作業を、上記取得データの解析によって実現し、全体の作業時間を短縮する。
GPS電波なしでも正確な位置情報とともにトンネル覆工面の幅0.1mm以上のひび割れを見つけ、解析する。過去と現在の画像および点群データの比較によって、トンネル形状の経時変化も把握できるという。三菱電機は今後MMSDⅡをAI化し、跨線橋・法面・擁壁などトンネル以外の構造物検査への適用も検証し、鉄道のさらなる安全、安定運行に貢献していく構えだ。