密教彫刻の最高傑作、空海の立体曼荼羅をリアルに再現
仕事で凡ミスをしたとき、「弘法にも筆の誤り」と言い訳し、ゴルフ場で偶然チップインバーディーを決めたとき、「弘法筆を択ばず」と鼻を膨らます。勘違い男たちの口の端にもそのおくり名が上る、空海は日本真言宗の開祖であり、高野山金剛峯寺を建立し、京都東寺も経営した大師である。
空海(774~835年)は、言葉では伝えにくい密教の教えを視覚的に表す『立体曼荼羅』を構想。それは東寺講堂において、大日如来を中核にして4体の如来を配した「五智如来」、その右側に金剛波羅蜜菩薩を中心にした「五大菩薩」、左に不動明王を中心にした「五大明王」、四方には「四天王」「梵天」「帝釈天」が諸尊を守るように配されたものであり、平安時代前期の密教彫刻における最高傑作だという。
東京国立博物館と凸版印刷は、真言宗総本山 教王護国寺(東寺)が所蔵する国宝16体、重要文化財5体からなる立体曼荼羅を再現するVR(仮想現実)作品『空海 祈りの形』を製作。これを同博物館で3月26日から開催する特別展「国宝 東寺-空海と仏像曼荼羅」の連携企画として、同館東洋館内「TNM & TOPPAN ミュージアムシアター」で27日から上演する。
同VR作品(参考動画:YouTube)は、重要文化財「紙本著色弘法大師行状絵詞」を用いて空海の入唐から講堂建立までの軌跡をたどる。絵詞に描かれている国宝「犍陀穀糸袈裟」をはじめ、空海が唐から持ち帰った国宝「金銅密教法具」や「海賊蒔絵袈裟箱」などゆかりの文化財も紹介する。
高さ7メートルの「大日如来」をリアルに、そして立体曼荼羅21体すべてをVRならではの手法で鑑賞できる。立体形状計測と高精細デジタル撮影によるデジタルアーカイブを実施した凸版印刷は、同作品について、現地講堂内部の柱を省き往時の配置を正確に再現した、21の仏像を巡りつつ、それらの位置関係から空海の構想した立体曼荼羅の意味を紐解けるという。