心筋細胞に分化しやすいヒトiPS細胞、そのマーカー遺伝子を同定

2006年に誕生したiPS細胞(人工多能性細胞)は、皮膚などの体細胞へ数種の遺伝因子を導入し、培養することによって様々な組織や臓器の細胞に分化する能力と、ほぼ無限に増殖する能力をもつ(京大CiRAサイト参照)。

平成26年9月には世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われた。再生医療(定義:多能性幹細胞安全情報サイト)でヒトiPS細胞から誘導される細胞を応用するためには、目的の細胞に分化しやすいiPS細胞株を選ぶ必要がある。分化しにくいものを選んでしまうと、未分化iPS細胞が移植細胞群に残りやすくなり、それが患者の体内で腫瘍を形成する危険性を高くするという。

神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)理化学研究所国立医薬品食品衛生研究所は今月22日、3者の共同研究グループが、ヒトiPS細胞から心筋細胞への「分化しやすさ」を予測可能なマーカー遺伝子として、CXCL4/PF4を同定したと公表した。同グループは、心筋細胞へ分化しやすいiPS細胞株と分化しにくいiPS細胞株の遺伝子発現を、3つの遺伝子解析手法を用いて網羅的に解析――。

理研が開発した世界唯一の遺伝子解析技術CAGE法に加え、mRNAアレイ解析、microRNAアレイ解析を行い、バイオマーカー候補遺伝子を抽し、その後改めて用意したiPS細胞株との間で比較した結果、CXCL4/PF4の発現量が心筋細胞への分化しやすさと相関することが明らかとなった。即ち、CXCL4/PF4の発現量を目印にすれば心筋細胞の製造に適したiPS細胞株を選び出せるという。

KISTECが神奈川県の 先進異分野融合プロジェクト研究立案・推進事業で支援した「再生医療等製品の品質・安全性評価プロジェクト」における今回の研究成果は、iPS細胞による心筋再生医療の実用化への貢献が期待され、英科学誌サイエンティフィックリポーツ(電子版)に掲載された。