事業や社会、自然環境など様々な物事の持続可能性が問われ、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」時代の幕が開けた今、自動車などと同様、洋上をゆく船舶でも、先進的ITやビッグデータを活用して、より高度な安全性と環境負荷の低減をめざす動きが広がっている。
3月11日、船舶維新NEXTプロジェクトを推進している商船三井、MOLグループの商船三井内航、商船三井システムズは、、「センシング可能な係船索および状態表示システム」の実証試験を始める。その破断が港湾設備や船の損傷等の大事故を招くこともある、船と港をつなぐ係船索に着目した今回、センサー組込み索とその張力・強度を把握するしくみを開発。これをドライバルク船「せどろす」に取り付けて効果を検証するという。
一般に係船中の船は港に張力モニターを保有している場合を除き、係船索にかかる張力を把握できず、海気象等による想定以上の外力に有効な対策がとれない。係船索はまた、想定内の張力下でも、目では判断のつかない劣化が進行していて、強度不足により破断することがあった。そこで商船三井は帝人およびテザックと共同で、高強度のパラアラミド繊維テクノーラ®にセンサーを組み込んだ係船索と、その状態監視システムを開発した。
張力により繊維の伸縮が繰り返されても元の寸法に戻る、寸法安定性に優れたテクノーラの採用はMOLグループ運搬船の係船索として初だという。「せどろす」での実証後、商船三井グループ3社は、「センシング可能な係船索および状態表示システム」を実用化し、荷役中の港および船上における更なる安全の提供につなげたい考え――。将来的にはこれを高度な係船監視システムの開発に生かし、荷役効率向上に繋げていく考えだという。
商船三井は今回のプロジェクトを通して得られる知見やノウハウを多様な船種に活かし、船舶IoTを活用した安全運航の強化に積極的に取り組んでいく構えだ。