天守の修復を支援する、デジタル画像マッチング技術を商品化
西南戦争の際、薩軍は齢270年のそれを青竹一本でたたき割ると豪語しながら落とせず、西郷どんに「清正公と戦ってるようなもんじゃ、勝てるわけがなか」と言わしめた。のち現代でも県民の至宝である、熊本城が、先の大地震で武者返しの一部や櫓の石垣などを崩された。
重要文化財建造物13棟全て、再建・復元建造物20棟全て、便益施設26棟、地割れ約12,345平米、石垣約23,600平米(全体の約3割)に及ぶ被害の総額は約634億円。国内外から毎年170万人の観光客が訪れる、熊本のシンボルである名城の完全な修復には約20年間を要する(熊本城復旧基本計画より)。
なかでも石垣は最も被害が大きく、修復にあたっては、図面化した崩落石材約3万個と、崩落前の石垣画像を、専門家が目視比較してその位置を特定する。それだけでも膨大な時間を要していたという。富士通と富士通アドバンストエンジニアリングは、被災して「一本石垣」となった熊本城飯田丸五階櫓にて、昨年末の約1ヶ月間、画像認識技術を用いて位置を特定する実証実験を行い、高い精度と作業時間の大幅短縮を達成した。
熊本市経済観光局、熊本城調査研究センターが保有する崩落前の石垣画像と、崩落後に撮影した石材画像を活用し――大量画像から目的の画像(部分一致でも可)を瞬時に検索する高速部分画像検索技術と、その検索精度を高める画像最適化技術を組み合わせた「石材位置特定システム」を開発。飯田丸五階櫓石垣の崩落石材123個を対象に、上記2種類の画像をマッチングさせ、精度向上と検索時間の短縮を試みた。
結果、最終的に1日101個の石材の正確な位置を特定。82.1%の精度が得られたほか、作業時間も大幅に削減可能であることが確認されたという。両社はこの精度をさらに高めるとともに、他の文化財修復現場への適用を進め、これを文化財復旧支援ソリューションとして'19年度中に商品化する構えだ。