内視鏡外科手術が最も普及している胆嚢摘出術においては、手術の際に目印となる臓器や血管の位置を正確に把握することが非常に重要だ。これまで0.5%程度の割合で胆道損傷が起きており、その6割~7割は臓器や血管位置の誤認が原因であるとされている。AIの活用で、この誤認低減する可能性を探る取り組みが始まった。
オリンパスは、大分大学、福岡工業大学とともに、日本医療研究開発機構(AMED)の「未来医療を実現する医療機器・システム開発事業」に参画し、「人工知能が術中に外科医の意思決定を補助する医療システム」の共同開発に成功したと発表した。2018年12月には大分大学にて行われた世界初のAIナビゲーション外科手術が成功したという。
この研究においてオリンパスは、腹腔鏡下胆嚢摘出術の内視鏡画像にランドマークとなる臓器・血管の位置の情報を簡単に紐付けることができるソフトウェアを開発。このソフトウェアを使うことで、これまで数千枚以上もの画像に対して手動で入力する必要のあった情報の紐付け作業の負荷を大幅に軽減することが可能になり、より質の高い多くの教師データをAIに学習させることができるようにした。
このソフトウェアで作成した教師データを、福岡工業大学が開発したAIに学習させた。AIが学習したデータをもとに、腹腔鏡下胆嚢摘出術中にランドマークを表示する機能については、大分大学、福岡工業大学、オリンパスの3者で開発を行い、推定精度95%以上を達成しているという。
オリンパスは、この共同研究で得た知見を活かし、今後、大腸や胃など、他の部位・疾患における腹腔鏡手術においてもAI活用の研究を進めていく予定だ。