微小重力を1秒で測定可能な低雑音の重力センサーを開発、東北大学ら

東北大学は、石英の細線で懸架された7ミリグラム(mg)の鏡の振動を1秒の測定時間で10~14メートル(m)程度の分解能で読み取れる測定器を開発した。これは、100mgの物体が懸架鏡から数ミリメートル離れたところで振動したときの重力変化を捉えることができる性能だという。

東北大学学際科学フロンティア研究所(電気通信研究所兼任、JST 戦略的創造研究推進事業さきがけ研究者兼任)の松本伸之助教、東京大学大学院理学系研究科の道村唯太助教、国立天文台重力波プロジェクト推進室の麻生洋一准教授、東北大学電気通信研究所の枝松圭一教授らの研究グループが開発。

現在の科学技術は量子力学と呼ばれるミクロな原子や電子の運動を記述する法則と一般相対性理論と呼ばれるマクロな重力法則の二つを土台にして築かれてきた。これらの法則の発見以来100年近く経過しているが、各々の理論はその間に実施された全ての実験結果と整合性のとれた優れた理論であることが知られている。しかし、これらの理論が適用されてきた実験的なスケールは大きく隔たっており、両理論の統合に向けた検証実験は未だ実現していない。

従来の実験では重力と量子状態はそれぞれ異なるスケールで検証されてきた。これまでに測定された最も小さな重力源の質量は90gである一方、これまでに量子状態を実現した最も重い物体は40ng。両実験のスケールには10桁もの隔たりがあった。現在、2つの異なるスケールを統合することで創成される新たな研究領域に注目が集まっている。

重力と量子の実験スケールを統合するためには、微小重力やゼロ点振動の観測が可能な精密な変位測定系の構築が課題となっている。現在、世界で最高の空間分解能を誇る変位測定装置は「重力波検出器」だ。東北大学、東京大学、国立天文台から成る研究グループはその技術を応用することで、懸架鏡の変位を1秒の測定時間で10~14m程度の高い分解能で測定することに成功した。

研究グループによると、重力波検出器の開発で発展した技術を応用することで従来の限界を打破できるという。重力の量子的な性質を明らかにする新たな研究分野の創成に期待できる。