近年、iPS細胞などのいわゆる万能細胞を用いた再生医療研究が盛んに行われている。安全性が最優先されるべきその現場および無菌性の高度な管理などに対して、再生医療等製品(ヒト細胞加工製品)の治験開始における技術的指針が示されている。
「再生医療等製品の品質、非臨床試験及び臨床試験の実施に関する技術的ガイダンスについて」(厚労省ウェブ)の第2項にある。マイコプラズマ否定試験は従来、訓練を受けた者が目視確認して汚染の判定を行っていたため、判定者の養成に時間と費用が掛かっていたうえ、試験ごとに多大な時間と労力が必要であり、これらの課題が製品開発の障壁の一つに数えられていたという。
大阪大学大学院医学系研究科とDNPの研究グループは、人工知能(AI)技術を応用し、PMDAウェブサイトにある第十七改正日本薬局方参考情報にも掲載の、マイコプラズマ否定試験を自動で判定する細胞画像解析ソフト(プログラム)を開発。これにより、試験ごとに人が約2時間費やしていた判定作業を約5分で済ますことに成功した。
同グループは、適切な試薬等を用いてマイコプラズマ否定試験(指標細胞を用いたDNA染色法)を実施。同一検体を用いて、熟練の目視と上記プログラムでの判定結果を比較した。今回用いた画像データでは、目視確認にて誤答が生じた「マイコプラズマを5CFU(コロニー形成数)となるように添加した検体」の汚染においても、判定プログラムは正答し、目視判定が困難である低い濃度での汚染に対しても適切な判定ができたという。
研究はAMEDの 「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」の支援のもと行われものであり、成果は同事業の報告会にて19日発表される。判定時間短縮を実現した解析ソフトはPMDAと合意済みであり、大阪大学が行うヒト(同種)iPS細胞由来心筋細胞を用いる医師主導の治験にて、製品に対する品質試験に導入予定だ。